真清田の竜神

門部:日本の竜蛇:中部:2012.01.05

場所:愛知県一宮市 真清田神社
収録されているシリーズ:
『日本の伝説16 全国編』(山田書院):「真清田の竜神」
タグ:竜王に逆らい雨を降らせる竜


伝説の場所
ロード:Googleマップ

尾張一宮・真清田神社には、尾張開拓の祖神・天火明命をのせて現われたという八頭八尾の大竜の伝説と、弘法大師が命を吹き込んだ茅草の竜神伝説がある。今回はこのうちの茅草の竜神伝説を紹介しよう。

真清田神社
真清田神社
レンタル:Wikipedia画像使用

真清田の竜神:要約
ある年、尾張一帯を大旱魃が襲った。人々は弘法大師空海に雨乞いの行を依頼。空海は茅草で竜を作りこれに命を吹き込んだ。しかし竜は「天下の竜すべてが竜王の怒りにふれて封じ込められているから一滴の水も吐けぬ」と言った。
しかも、禁を破れば、たちどころに竜の命はないと言う。そこで空海は「汝禁を破り犠牲とならば、神として汝を望みの社に祀ろう」と提案した。すると茅草の竜は真清田に祀られることを条件に提案をのんだ。
空海が硯の水を大地に注ぐと、にわかに黒雲が全天を覆い、茅草の竜がその雲目がけて昇天した。同時に雷鳴が轟き、豪雨となった。人々は躍り上がって喜んだが、次の瞬間ばらばらになった血まみれの竜の胴や足が落ちてきた。
人々は息をのんだが、空海は遺体を一ヵ所に集めると懇ろに供養し、約束通り真清田神社に竜を祀ってやった。

山田書院『日本の伝説16 全国編』(日本伝説拾遺会)より要約

真清田神社そのものに関してはこちらを
「真清田神社」(webサイト「玄松子の記憶」様へ)

主祭神に関して尾張祖神・天火明命を古くから祀っていたのかどうかという点は難しいようだが、尾張氏の拠点であったことは間違いないのだろう。そこにこの竜神伝説があるということが大変興味深い。下総印旛沼の竜神伝説との類似において。

下総香取神宮はもともと東進した尾張氏・海部氏が霞ヶ浦に臨んで祀った海神であったのではないかと見る向きがある。一方香取神宮は匝瑳から開拓を始めた物部氏の信仰の集約点であるという側面もある。尾張氏が物部氏の傍系なのかどうかというのはこれまた難しい問題なのだが、物部氏の下総開拓ルートを示すかもしれない印旛沼の竜の話と類似する話を尾張氏が持っていた、となると俄然注目されるのである。

竜王に逆らい雨を降らせた竜の話を運んだのは誰か。尾張一宮の竜神伝説は、古代の黒潮の流れをたどり、東西の関係を語る竜の話なのかもしれない。

真清田神社の「吐水龍」
真清田神社の「吐水龍」
レンタル:写真AC画像使用

memo

真清田の竜神 2012.01.05

中部地方:

関連伝承:

雨を降らせた竜
雨を降らせた竜
千葉県印旛沼周辺
▶この記事へ…