HUNTER's LOG
MONSTER HUNTER 0

調査員と肉焼きと


話はベルナ村と古代林に移る。ここでは調査員のタマゴの活動を一方の筋としていこう。狩ではなく調査が目的で狩場に入る人の活動と、それに先んじる、ゲーム上のチュートリアル、肉焼き・調合などの基礎の基礎のところも扱っておきたい。このパートの主人公となるのは、これまでと違ってモデルでなく、上の娘っ子本人だが、その話はまた長くなるので後段にまとめた(「レベッカ・フォール」)。

このMH0の話も、森丘でランポスを狩るところからのスタートだったので、それ以前の狩場での活動の部分は飛ばされている。しかし、そのひとつひとつの行為の背景というのも、MH0の厚みを支える重要なものなのだ。またそれはハンターのような力を持たずに狩場に出る調査員も、最低限身につけておかねばならぬ基本である。

いきなりナンパされてますが……

ところではじめに一応述べておくが、古代林とベルナ村の位置関係はよくわからない。古代林は船で近寄りがたい海流の中に隔絶していた島にあり、飛行船の発達で行けるようになったという。一方でマッカオの侵出を心配する村が古代林近くにはあるのであり、オストガロアの伝承を持つ漁師たちもいるのではある。ベルナ村からは飛行船で赴く隔たりがある一方、ベルナ村周辺でも古代林固有のゼンマイが採れるようでもある。

ここでは、ベルナ村と古代林はまったく異なる地にあるものとし(ゼンマイは古代林から持ち込んで育てているのだろう)、あくまで龍歴院の調査対象として古代林(のある島)があるのだとする。つまり、村が直近のフィールドの恵みを欲するというモデルではないということだ。調査員が主役の舞台としては、そのほうが似合っているだろう。

狩の最小単位

MHは肉焼きにはじまる。MH1発売時のCMでこんがり肉を焼いてから14年、MHWのPV一弾でもこんがり肉を焼いていた。実にMHとは、こんがり肉を焼いてなんぼのゲームなのだ。MHXXの訓練課程も、まずそこからはじまる(ちなみに彼女はリオについてフィールドに出ているということで、カリスタ教官の出番はない)。

『基礎の基礎』肉焼き

ギルドや村といった社会的要素を取っ払って、ハンター個人がモンスターを狩る必要といったら、端的にはその肉を食うこととなる。それが最もシンプルな狩だ。すなわち、狩場でこんがり肉を焼いて食うことが、MHを構成する狩の最小単位となる。そこから社会的な要請に応えるという、複雑な狩模様を構築するのはゲームとしては手間なので、いろいろスキップできる仕組みは用意されている。

しかし、全部を全部スキップするようになってしまうと、狩の根幹が失われてしまう。日々の狩の中に、うまいことこんがり肉を焼いて食うというシーンを挟んで行けるのが良きプレイヤーというものだ。MH0において、これまでも狩の一時中断(モンスターが怒った際の離脱や就寝時間の想定)を強調してきたが、要はそこで肉を食おうということだ。自宅のアイテムボックスにこんがり肉99個を常備しておいて持ち込むというのではなく、狩場で生肉を得て焼いて食うのである。

次稿の前振りもあり、少しだけ面倒な話もしておく(次はとても面倒な話だ)。この狩場で肉を得て食うという行為は、モンスターたちの暮らす世界にハンターが参加する手続きでもある。「肉(餌)の取り合い」(広義には縄張りの取り合い)のみが、モンスターにも通じる「戦う理由」なのだ。お前の縄張りの肉を(あるいはお前を)俺も食うぞとハンターが立ちはだかるから、モンスターはハンターと戦う。お前を素材に欲しいから殺し合おうとモンスターにいっても、モンスターはまったく納得しない。それはモンスターに通じる理由ではない。

モンスターが戦う理由

だから、モンスターの領域に立ち入り、少しでも彼らに刃を立て撃ち込もうというならば、肉を食ってそうする理由をモンスターに表明せねばならない。それが狩場の最低限の礼儀であり、調査に入る人であっても例外ではない。ということで、ここの調査員のタマゴ・レベッカもまずこんがり肉を焼いて食うことからはじめるのだが、古代林にて生肉が得られるモンスターは以下の通り。カッコ内はMHXXにおける剥ぎ取れる確率(下位・上位・G級)。

・リモセトス(75%・65%・45%)
・ガーグァ(70%・70%・40%)
・リノプロス(35%・20%・20%)
・ケルビ(10%・10%・5%)

チュートリアルではリモセトスから得るしかないが、こんがり肉のためにあの巨体を屠るのかというと微妙にアンバランスではある。そもそも、古代林にしか登場しないモンスターというのはリモセトスだけなのだ(オストガロアはさておく)。固有種である。殊に今回は希少な環境を重視する調査員の話ということでもあり、通常クエストでは基本ガーグァから生肉は得よう。ガーグァは奥の方にいるので少々骨だが、そのほうが狩に組み込む工夫を試すのには妥当ともいえる。

古代林のリモセトス

こんがり肉の代わり

とはいえ、肉焼きセットを忘れ、狩場で往生するというのは誰にもあることだ。それで、いざフィールドでこんがり肉の代わりにスタミナ供給源となるものをというと、これが中々難しい(体力のように寝て回復するというものではない)。そこは一方の人の知恵の出番である。少々次稿の調合の話にもなるが、基本スタミナ源としては次のようなものがある。レベッカは肉を焼く傍ら、以下のレシピなどをリオに教わり、試せるものは試してみるのである(タイトルごとに異動のあるところなので、特記がない限りMHXXでは、ということ)。

携帯食料
支給品はさておくとして、フィールドではアイルー・メラルーの物置や、キャンプ跡地などで得られる(MHWでは持ち込めるアイテムになった)。こんがり肉の半分のスタミナを回復する。ここで気にしたいのは、そもそも携帯食料とはどういったものか、という点だ。昔の小説版にはレーションのような(カロリーメイトのような)描写があったが、MH4Gのオープニングムービーには、干し肉様のものを齧っているシーンがある。

干し肉というのはいい塩梅

あれはおそらくモスジャーキーでスタミナ回復効果はないのだが、その効果がある干し肉様の携帯食料というのはあっても良さそうだ。メラルーが狙ってくる獲物としても、レーションより説得力がある。無論、携帯食料といってもいろいろあるのだということで良いのだが、干し肉であると作る準備という光景も思い描きやすい。生肉の得難いフィールド(砂漠や火山や原生林)では、生焼け肉を干し肉に見立てて準備し、持ち込むというのも良いかもしれない。

元気ドリンコ
ハチミツとニトロダケの調合で得られる(成功率は75%)。こんがり肉の半分のスタミナを回復する。現地採集でこれが可能なフィールドは、古代林・森丘・渓流・沼地・地底火山・密林・遺群嶺……と多く、意外なことに現地で用意することが十分現実的なスタミナ源である。元気ドリンコには睡眠効果を打破する効能があるので、睡眠攻撃を仕掛けてくるモンスターとの一戦に持ち込みを忘れた際も、現地採集調合の利がある。

特産キノコキムチ
特産キノコとトウガラシを調合することで得られる(成功率は90%)。こんがり肉の半分のスタミナを回復し、ホットドリンクの半分の時間だが、防寒効果もある。素材が良く採れ、寒冷な洞窟もある沼地フィールドでは普通に活用できる。なお、逆の効果の類似品に氷結晶イチゴがあるが、砂漠の氷結晶はサバイバルのときのために普段は手をつけない、という前提があるのでこれを現地調合では用いない。

失敗は織り込むもの

と、実際打つ手としてはこのあたりだろうか(また別系で茸食のスキルもあるが)。あとは良い機会なのでこの点の不満も述べておきたい。なぜ魚じゃダメなのか、という話だ。現状スタミナ源となる魚はいない。かつて元気ドリンコの調合素材に眠魚があったことはあるが、そのくらいだ。サシミウオに体力回復20p+スタミナ回復25pくらいの働きがあっても良いのじゃないかと思う。

確かに先に述べたように、生肉を得てこんがり肉を焼くというのは、ただのお約束ではなくMHの重要な最小ブロックであり、それを行ってもらうために他の方策を制約しているのではある。しかし、実際には制約の結果「スタミナが減る前に片をつける」ことが助長され、今では「そうできないクエストはストレスになる」という感覚が普通になってしまった。その挙句に携帯食料を持ち込みとしてストレス緩和とし、こんがり肉の存在感が激減というのがMHWである。

サシミウオとはいわずとも、フィールドの一番奥の釣り場に行けば焼いて食えばスタミナ源となる魚が釣れる、とかあっても良いのじゃないか。うなぎのような容姿をしていたら言うことなしだ。メラルーがエリアをこえて追いかけてきそうだが。

シンドイワシというのはいるのだし

レベッカ・フォール

MHX-MHXXの龍歴院への出向の話はリオ自身の活動そのものなので(「今」よりはひとつ前の時期になるが)、ルーキーの話にはならない。ゲーム上のこととしても、それなりの実績が買われて出向してきたという話なので、そもそもがルーキーの話ではない。

一方リオの物語では、この時期に調査員のタマゴがひとり、彼の行動に大きく関わってくることになっている。レベッカ・フォール。まだ15歳の彼女は、この三年ほど後にリオとコンビを組んであれこれ騒ぎを起こすことになるのだが、すでにこの龍歴院時代に接点があるということだ。もともとレベッカは物語の主筋で大きな役割を果たした人物の孫娘で、リオとは彼女の記憶にはない赤ん坊の頃からの知り合いなのではある……今少しそこは詳しいほうが良いだろうか。

ノレッジ・フォールとハリーという、公式に登場している王立古生物書士隊員がいる。ここでは、二人をここの話より四十年近く前に活躍、結婚した人物としている(王都を二分する勢力争いの発端・中心となった)。リオの師・姉弟子と深く関係する夫婦で、リオ自身も何度となくヴェルドの二人を訪ねていた、という次第。その息子(リオより少し年上)は、浮世離れした両親を見習わず、ハンターの世界とは直接関わらなかったが、孫娘のレベッカは祖父母及びリオとその姉弟子に憧れ育ったのであった。

このような次第で、書士隊員を目指す彼女はまだ学生なのだが、長期休暇を利用して、縁のあるリオのところに「体験学習」を願い出て(ねじ込んで)きた、という具合である。本来はまだ一般のハンターに未開放の古代林なのだが、リオの調査も一通り済み、その活躍でディノバルドやオストガロアの脅威も去りと、そろそろ開放の頃合いかというタイミング。レベッカが入るのはその先駆けとして丁度良いのじゃないかという話になった次第(「次代を担う逸材」という……いわされた……リオの後押しと、そのリオがお目付役になることが前提だが)。

おばさま

レベッカとしては、ただの調査員ではなく、ハンターとしてもそこそこの働きができるような存在を目指している。そういうところは(公式にも書士隊員兼トレジャーハンターであった)祖父の影響が強い。その存在を知っているわけではないが、思い描く理想像はまさにMHWの「おばさま」ことフィールドマスターの姿となる。そのようなわけで、ただの調査員よりもハンターの身につけるべき基礎のノウハウに真剣であるということだ。

ちなみにヴェルドに帰った彼女が学院に提出した古代林のレポートは大いに話題になったが、同時に『月刊 狩に生きる』に寄稿した「調査員のための狩場の一歩」は輪をかけて話題になった。すでに引退していて『狩に生きる』を読むのを楽しみに暮らしている老(元)ハンターたちが「あのノレッジ・フォールの孫娘が狩場に出よった」と大喜びで、掲載された号は売れに売れた……のだそうな。

15歳でこんなものを見ちゃったら……

ただ……いきなり古代林というのはやりすぎだったか、という気がしなくもない。上のような光景をその歳で見てしまったら、もはや安穏な人生は歩めまい。もっとも、そうでなければおばさまのようにはなりますまい、という気もするが。

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概要
MHシリーズの基盤にはどのような構成があるべきか、ここでは「MONSTER HUNTER 0」のタイトルでそれを考えてみたい。

▼ ベルナ村

調合と駆け出しと
人はモンスターのような強靭な身体を持たない。牙も爪も比べようもないほど貧弱だ。しかし、人にはモンスターにはない武器がある。それは人よりに世界を書き換えていくという力・知恵と技術だ。これは狩場では調合という形で現れる。というよりも、調合とはそのような視点から捉えるべきものなのだ。

古代林をめぐる1
せっかく調査員(のタマゴ)が主人公なので、古代林フィールドのレポートをまとめよう。例によってゲーム攻略のための話ではなく「あの世界の調査員は何を調査するのか・すべきか」というような視点寄りの話となる。もっとも、体験学習に来た学生の話なので、扱う範囲はドスマッカオあたりまでとなる(これとて討伐などできるわけもない)。

古代林をめぐる2
古代林エリア3の洞窟から、エリア4・5・7あたりは、表の森とでもいうべき場所だ。以降の深層に比べれば、森丘や密林と(あるいは樹海と)似たような樹林地帯である。故にモンスターにとっても住みやすく、縄張りを主張したいエリアであるので、狩においては主舞台ともなる。

▼ その他

森丘とランポスと
それぞれの土地には、そこに良く適応し、旺盛に繁殖するモンスターがいる。これをどう制するかがその土地に村落を営む人々、その村のハンター第一の課題であり、森丘に近いココット村ではランポスがその対象となる。