HUNTER's LOG
MONSTER HUNTER 0

「探窟」と模倣と


今回はこれまでと全く異なり、ゲームプレイヤーとしての「私」視点からの話としたい。十年前にもやったが、要は私が「おお、これは」と膝を叩いた漫画などゲーム外の要素をゲーム内で模倣してみるという話だ。地底火山を舞台にしたその一例をあげ、あとここ数年でMHの世界を考える上で影響を受けたいくつかの作品を紹介したい。

メインであげるのは、つくしあきひとによる漫画『メイドインアビス』(竹書房)だ。あの底無しの奈落アビス的に地底火山を描き変え、その深層で「探窟」を行うべく、上からの層を突破していくという話になる。それをいくつかのフィールド・クエストを組み合わせて行う、という実際を見てみたい。

『メイドインアビス』
©︎つくしあきひと/竹書房

メイドインデーダ

火山の鍛冶ハンターにはローグ・タンバというモデルがいて、その彼の住む村が火の国のデーダという村である、という話であった。デーダ村は人族の起こしたそう古くない村なのだが、付近の土竜族の集落に伝わっていた伝説からその名がとられた。

太古の昔、後にデーダと呼ばれることとなる星がこの地に落ちてきたのだそうな。またデーダは巨龍であったとも巨人であったともいわれる。このデーダの落下によってできた大穴の底で、そこに出現した禁忌の龍と人らとの大戦があった。その激しい戦いが周囲の大地に火を吹かせ、火山地帯が生まれたのだという。

デーダ村の名はこの伝説に由来し、その紋章は星印となる。火山には今なおその「大穴」があり、その灼熱の奥底に太古の塊などは出土する。おおよそこのような舞台仕立てだ。当然、MH4由来の地底洞窟-地底火山のそことは似て非なる場所、ということではあるが、ゲーム内の地底火山も、オストガロアの竜ノ墓場を思わせるような、尋常ならざる「穴」なのではある。

硫黄煙の漂い出る穴の底へ

ところでゲーム上の問題点として、火山や地底火山での採掘が「儲かりすぎる」というアンバランスさがある。地底火山の採掘ポイントをぐるっとまわり、得られた鉱石などを売り払うと、それで8万ゼニーとかになってしまう。禁忌の龍の討伐報酬などをはるかに上回るわけだ。本当にあの通りであったら、火山地帯はゴールドラッシュで瞬く間に掘りつくされることだろう。

それがそうならないのは、そこへ行き着くのが大変だからだ、としたいところである。アプトノスも行けるキャンプ地からピョンと飛び降りたらカブレライト鉱石がザクザク掘れるというのは、あまりに有り難みがない。そこで、デーダの大穴は、通常のフィールドがひとつの層にあたるほどの大きさ深さで、これが多層重なった底の最深部に地底火山様のフィールドがあり、太古の塊などはそこで得られるのだ、としたい。つまり、アビスだ。

可愛らしいキャラクターの絵図を使ってそれはそれはえぐい話を続ける「度し難い」つくし卿なのだが、そのメインストーリーは関係しないので、それは作品そのものにあたられたい(恥ずかしながら、ナナチとミーティの話など「目頭が熱くなる」じゃすまなかったです、はい)。ここではその舞台の大穴アビスが多層構造であること、厳しさを増す深層から得られる遺物(これが富となる)を求めて、日々奈落に潜る「探窟家」の暮らしがあること、という点を真似たい。

具体的には、MHXX内の複数のフィールド・複数のクエストを連続させ、最後に地底火山で採掘をする、という結構となる。今回は「そのくらいからはじめた」という3層構造のイージーモードだが、自分で作るのだからいくらでも難易度を上げることはできる(大連続狩猟をこういう方向に調整することはできないだろうか、という話でもある)。

層を重ねる

アビス風にいうところの深界一層は、古代林フィールドを流用するのが良いだろう。デーダの大穴に入ると、まずあのようなところを突破することになる。実際に古代林そのものが二層構造になっているので「降りる」という感覚は充分だ。クエストはあらかじめ見繕ったものから(地底火山が上位からなので上位仕様になるが)、サイコロなどで選ぶと良い。はじめのうちは、採集・ドスマッカオ・テツカブラの三択あたりが良いだろうか。

色々いわくありげな土地でもある

ボスモンスター討伐は、ダンジョンRPGでいう階層主討伐(で、先に進める)のようなものではあるが、MHの探窟ハンターとしては、お宝満載の帰途襲撃に遭うとたまらん(卵運びを思い出そう)というほどの話としたい。なので、撃退を織り込めるようならそれでも良い。なお、画像はテツカブラに氷属性のハンマーだが「何が出るのかわからない」前提の行程なので、最適武具の準備などはできない、ということだ。

また、重要なのはこの先二、三回のクエストまでが一回のクエスト扱いになるという点で、装備や持ち込みアイテムはこの時点のもので最後まで行くことになるところだ(時間縛りは自分の腕前と相談して決められたい)。さらに、ネコ飯は採掘に合わせてとるだけとする。つまり、最後の地底火山以外はネコ飯での体力増強などがないということになる。

テツカブラ相手に湯水のように回復薬を使うようでは、深界二層以降へはとても進めない、当然有用な探窟もできないわけだ。それはアビスの探窟家も同様、もちろんハンターとしても当然の関門であるだろう。ちなみにテツカブラは瀕死になると古代林の底層のほうに逃げるので、わざと逃して飛び降り追うことで、大穴の下層へ向かうのだという雰囲気を高めることのできる相手だ。

実によくひっくり〝かえる〟

深界二層は遺跡平原あたりを流用するのが良いだろうか。地底火山入り口には人工物らしき構造が見えるが、遺跡平原の遺跡と似た風でもある。上へ向かうフィールドではあるが、そこを下へと見立てても良い。岩壁エリアの断崖など、地底火山に続く壁だと思えなくもない。もちろん穴の中とあっては、ゲーム内の遺跡平原のような青空は望めないはずなので、空には目をやらないでおこう。クエストとしては、採集・アルセルタス・ケチャワチャの三択あたりではじめたい。

ちなみに見繕うクエストだが、やってみて回復アイテムの消費など全く心配ないようなら、危険度の高いモンスターを織り込むなり、途中をもう一層増やすなりして難易度を上げたらよい。第一層・第二層で回復アイテムの現地調達を行うようであるのが目安だろう。はじめに述べたように、根本的には強大なモンスターの討伐報酬を大きく超える収入が出てしまうアンバランスさの是正案である。これなら古龍を相手にした方がマシだと思えるくらいの難易度がゴールといえる(そうなったらもうルーキーの出る幕ではないが)。

アイテムが足りるようなら難易度を上げる

かくして、今回は探窟ハンターであるところのわれらが主人公は地底火山に着き、ようやく探窟が行えることとなる。ちなみに深界三層を挟む場合は沼地をあてているが、そこまでいったらルーキーの話とはまた違ってくる。沼地での相手はリコとレグ(アビスの主人公)の行程にちなんで、ぜひともネルスキュラをあてたい。いずれにしても、こうなると気軽なお守りマラソンというわけでもないので、防具の足をイーオスSからハイメタSにして、スロットを確保している。暑さ無効とお守り収集の発動という仕様だ。

最後の地底火山は素材採集によるなら、ドスイーオスがウロウロしているくらいだが、秘境スタートにしたいというならそうもいかない。伝統的にはやはり〝主任〟のウラガンキンのいるクエストで探窟を行いたくもあるが、ルーキに討伐は荷が重いか。一応村上位のウラガンキンクエストは乗りで二回ダウンを奪うとサブクリアになるので、これを撃退にあててそれに慣れてしまうという手もある(無論ルーキー設定をそこだけ目を瞑れば、強化したガイアルクなら十分討伐できる)。

伝統的には〝主任〟の監督下で

ともあれ「探窟ハンター」なるものを試みるとすると、まずはこのようなものになると思う。デーダ村にもアビスの探窟家のように、その腕前で階級があるものかもしれない(アビスでは呼子の色分けだが、MHなら角笛の色分けだろう)。黒笛のローグ、とか。

護石や風化武器、またここでは太古の塊から得られる結晶武器も、火山の由来を秘めた貴重なものであるとしているが、それらの貴重さというのも、入手確率だけで重さが付けられると話が広がり難い。やはり、このような具体的な困難があり、それを超える腕前というのが描きこまれて、その話は活きてくるだろう。さらには、ここでは『メイドインアビス』の探窟家を模倣したが、これによってその作品内の探窟家の厚みというものが、こちらの探窟ハンターの背景の厚みを担保してくれるのでもある。

ところで全くの余談であるが、つくし卿は私と同じ相模の人である。なぜそんなことを調べたのかというと、作中のアビスの縁を取り囲む探窟家の街オーズを見たときに「これ秦野盆地みたいだな」と思った、ということによる。果たしてつくし卿は学生時代その秦野盆地を東西に往来して暮らしていたようなのだった。もしかしたら、その記憶がオーズを生んだのかもしれない。そんな縁もあって、この稿のメインに持ってきたのでありました。

色々な模倣

十年前にもいくつかの作品を紹介した。例えば石塚真一『岳』(小学館)が雪山ハンターや、サポートガンナーのスタイルに影響し、大局では漆原友紀『蟲師』(講談社)が世界観の構築に影響した、というような話であった。ここでは、そこからこれまでのここ数年に大なり小なり影響を受けたものから、若い人にも身近(だと思う)なものをあげていこう。

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』
©︎大森藤ノ/SBクリエイティブ/ダンまち2製作委員会

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』
原作:︎大森藤ノ(SBクリエイティブ)

アニメの視聴のみ。これは登場人物に直接影響を受けている。まず、鍛冶師のヴェルフ・クロッゾ。それまで、鍛冶師が戦うというイメージが私にはなかった。ここしばらくの火の国の鍛冶ハンターの像にはヴェルフの影響が大きい。彼の魔剣を打つ技術というのも、属性武器や覚醒の仕様を考える上で刺激になっている。

そして意外なことに主人公のベル・クラネル。場合によってはMH0からは「強さを求めるハンター」の像は外されていた。これは私の年齢のせいというところが大きい。それがそうならなかった(まだ出てこないが、あとで出てくる)のは、ベル君のミノタウロスとの戦いのシーンによる。私もロキ・ファミリアの面々と同じく固唾を飲んだ、ということだ。枯れた内容一辺倒になる前に、危ういところで出てくれた助け舟の作品といえる。

『ハクメイとミコチ』
©︎樫木祐人/KADOKAWA

『ハクメイとミコチ』
樫木祐人(KADOKAWA)

ここ数年といわずとも、これだけ「その世界を細部から立ち上げる」描写の魅力に溢れた作品というのはそうはない。直裁にどこをどう真似るという意味での参考作品ではないが、ハンターの身の回りの稠密さから「お話」を組み立てていく上ではぜひ「これほどのもの」をめざしたい。

ちなみに主人公たちは小人であって子どもではない。だいたい毎回酒を呑んで酔っ払っている。そこもよい。あと、作中の大工組合・石貫會の「安全・迅速・丁寧・仲良し!」。MHのギルドもかくありたい。

『ゴブリンスレイヤー』
©︎蝸牛くも・黒瀬浩介/スクウェア・エニックス

『ゴブリンスレイヤー』
蝸牛くも・黒瀬浩介(スクウェア・エニックス)

「世界が滅びる前にゴブリンは村を滅ぼす。世界の危機はゴブリンを見逃す理由にならん」

この主人公のひと言が、私がモンハンサイトを再開する直接のきっかけとなったという思いもかけない話。MH0の概要というのはもう十年前からあったのだが、そんな危険度★4以下のモンスターばかり狩っている話などしてどうなるものか、と思っていた。それが上のセリフで「ランポスハンター」の像が定まった。

等々。先にも述べたが、このような色々の作品を模倣するということは、その作品の持っている厚みがこちらの厚みをある程度担保してくれる、というところに肝がある。自分の想像力だけでは手詰まりになるところも、あの作品ではどうであったか、と見直し真似し直しとする過程で、話を先に進める筋道というのが見えてくるものだ。模倣(ミミクリー)というのは、遊びの「元素」のひとつである。皆自分の好きな作品をどんどん模倣して、MHの世界を広げていったらいかがだろうかと思う。

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概要
MHシリーズの基盤にはどのような構成があるべきか、ここでは「MONSTER HUNTER 0」のタイトルでそれを考えてみたい。

▼ 火の国の村

鍛冶とハンターと
極寒の雪山から、舞台は一転して灼熱の火山に移る。ここの話は根本の部分が他と違う。主人公は生粋のハンターではない。火の国の工房村に生まれ育った鍛冶のルーキーである。その彼が(専門には敵わぬまでも)狩猟も行っているのだ。

初期武器とギルドと
ルーキーの鍛冶がいきなりハンター個人の依頼など受けることはない。まずは先輩・親方の助手を務め、自身の製作としては広くルーキーハンターのために店売りされている初期武器を鍛えてギルドに納品することが目標となる(多分あの流通はギルドが管轄している)。火山の鍛冶としては、やはり鉄武器を鍛えることになるだろう。

太古の戦と結晶武器と
どうも火山というフィールドは、われわれの世界でいう活火山とは異なるらしい。曰く、あそこは太古に巨龍との大戦があった土地である。曰く、禁忌の龍の出現した土地である。それらのことにより、大地が火を吹いてかくなったのである……と囁かれる。そこに出土する風化したいにしえの武器どもが、大戦の残滓であるのだ、と。

溶岩竜ヴォルガノス
鍛冶を本業としながら、ハンターとしても日々狩猟を行うという話なのだが、双方の関門にうってつけのモンスターがいる。火山の〝兄貴〟こと、溶岩竜ヴォルガノスだ。MH3・MH4系列には登場しなかったので、MHX以降で初めて対面したというプレイヤーも少なくないかもしれない。

補:武器の背景
「この武器をとことん使いこなしたい」という武器を持つハンター(プレイヤー)はさいわいである。武器種ではなく、特定のひとつの武器ということだ。それがあって、本当に「とことん」だったら、それだけで1シリーズ1000時間の狩猟経験となるだろう。MHにおける武器への愛着というのは、本来そのくらいのものであるはずだ。

▼ その他

ガラス素材と護衛任務と
ハンターの重要な任務に、ハンターではない人々が何らかの仕事をしにフィールドに赴くにあたり、その現場と経路の安全を確保する、護衛任務というものがある。ここでは森丘のセカンドフィールドとしての沼地に採掘に赴く人々の護衛任務という仕事を見たい。

骨素材と虫狩と
ゲーム内のクエストの背景を大きく変えてしまう例をあげよう。今回は甲虫の大発生クエストで、その大発生が村にとって重要なものであり、待ち望まれている季節的な一大事なのだという話をしたい。