HUNTER's LOG
MONSTER HUNTER 0

補:武器の背景


「この武器をとことん使いこなしたい」という武器を持つハンター(プレイヤー)はさいわいである。武器種ではなく、特定のひとつの武器ということだ。それがあって、本当に「とことん」だったら、それだけで1シリーズ1000時間の狩猟経験となるだろう。MHにおける武器への愛着というのは、本来そのくらいのものであるはずだ。

ところがこれもシリーズを追うごとに難しくなっていった。上のクラスができて武器の名前が変わるというのが大きいが、シリーズがごとに派生ルートやその性質まで変わってくる、という次第なので、イメージの固定が難しいのだ。それは十年前に予想したことではあるが、今に至るも特定の武器への愛着というものを無碍にするのは勿体ない、と思うことに変わりはない。

武器の仕組み

そのようなことで、昨今は武器の名前もその作製・強化方法もプレイヤーが好き勝手に想定したほうが良いのじゃないかと思うようになっている。ゲーム上シリーズごとに変化があるのはモンスター側環境側に変化がないわけにはいかないのだから仕方がない。それはそれとして「オレのこの武器はこうなの」と決め打ってしまった方が精神衛生上都合が良いように思う。

もうすでに森丘で見たように、ランポスを狩って暮らすココット村工房の技術の精華である、としたかったドスバイトダガーも独自の話としていた。MHXX上はホロロホルルの爪が強化に必要なのだが、ココット村の森丘にあれはいないだろう、ということでレイアの爪などでも強化できるのだ、とした。また、ポッケ村の雪山のハンターが普段使いとするとした鹿角ノ弾弓も、ケルビではなくガウシカの素材から作っているなどとした。

ここしばらくの火山の話でも、ゲーム上は普通に作製できるウィンドイーターなどの結晶武器を太古の塊として採掘されるのみとした。また、これはその稿では書かなかったが、ヴォルガノスの太刀・炎斬も強化ルートはゲームとは違うものとしている。ゲーム上は・鉄刀→ローグソード(マッカオの太刀)→炎斬なのだが、ここでは鉄刀→骨刀【犬牙】→炎斬と強化するものとしている。特にこの最後の例に関係するのだが、こうした背景の構築には、そもそもMHの武器とはどういう仕組みで属性などを持っているのか、というような点をある程度詰めておく必要がある(無論これも勝手な設定である)。

骨武器と鉄武器

ここでは、その武器の姿がよくわかる大剣を例にいくつかの武器を見ていこう。まず、基本的なことだが、武器にはモンスターの骨を圧縮硬化させ作る骨武器と鉱石素材から鍛造される鉄武器とがある。骨武器はその素材に色々のモンスターの素材を用いることにより、そのモンスターの属性を持たせることができる。一方、鉄武器はただそのまま鍛えていっただけでは無属性のままであるのが普通だ。

そこでまず、(おそらくマカライト強化以上に鍛えた)鉄武器にモンスター素材を融合させていくことによって属性を付与する、という工夫がなされる。なぜそのようなことができるのか。

前提として、MH世界の鉱石は元を正せばモンスターの亡骸に由来するのじゃないか、という部分を固定したい。鉄は保留するが、マカライト以下〇〇ライト鉱石の類はみな太古に滅したモンスターからできてくる。それを化石資源のように考えるか、生命の核のようなものが結晶と化すのだ、というイメージとするのか(MHWでは後者に傾いている)というのはあるが、それはどちらでも良い。

そして、鉱石と化しているそれは、生物であった頃の特性(属性)が「忘れられ」、ある意味幹細胞のような未分化な状態になっているものである、と考える。重要な点はここで、そうであるのでモンスター素材と融合させることによって、そのモンスター素材の持つ属性を鉱物質の部分が帯びることになるのだ、という話になる。MHX-MHXXの四天王モンスター武器の内に比較するのにちょうど良い大剣があるので見てみよう。

純モンスター素材武器と融合武器

左のディノバルドの大剣・灼炎のブレイザーは火属性の武器だが、その作製はもとより、強化の各段階でも鉱石素材を要求されない。純モンスター素材の武器といえる。この傾向は他の近接武器種でもそうなっている。「斬竜:ブレイド・ディノバルド」と呼ばれるモンスターなので(その尾が大剣のごとく鍛えられている)、面目躍如といえるだろう。

一方、右のタマミツネの大剣・狐大剣ハナヤコヨヒノは水属性の武器だが、刃の部分は鉱物を鍛えて作られ、強化されているものだ。その刃背部から柄にかけての拵えの部分がタマミツネ由来の素材でできており、これが鉱物製の刃部に水の属性を与えているのだといえる。独特な形状が多いタマミツネ武器なのだが、双剣や太刀もこれに倣ったつくりとなっており、意識的なものと見える。タマミツネは(爪がやたら硬い以外は)柔を極めたようなモンスターなので、これもまた確かにこうなる、といえるものだろう。

水剣ガノトトス

それぞれの事例について、もうひとつずつより分かりやすい見た目の武器もあげておこう。純モンスター素材大剣としてこれ以上わかりやすい見た目のものはないというのは、ガノトトスの大剣、名前もそのままの水剣ガノトトスだろう。背びれそのままという武器である。太刀も片手剣も双剣もガノトトスの武器はヒレそのままである。

ところがこれがMHXX上の強化ルートだと純鉄武器のアイアンソードから金属質など見えぬラギアソードを経てまた派生するというピンとこない仕様。このあたりはやはりボーンブレイドからの強化と考えたい。火属性大剣で似たような純モンスター素材武器となるレッドウィング(炎剣リオレウス)などは、ボーンブレイドから作られていく。

フルミナントソード

一方で、鉱物の刃部にモンスター素材を融合して属性攻撃を行う大剣としては、フルフルの大剣・フルミナントソードがわかりやすい見た目をしている(雷属性)。ゲーム上は作製の際に鉄が必要になるだけなのだが、その他の必要素材から上の刃部が作れるとは思えないので、実際は鉱物の刃であり、それも順々に鍛えられているはずだ、として良いだろう。フルフル武器の大剣以外では片手剣も同じような構造をしている。

このような外見を持っている大剣としては、あとハプルボッカの41式対飛竜大剣がある(刃の部分以外がミリタリ調という特異な武器群なので見た目でそれと知れるというのでもないが)。で、そして今度はこれらの武器が鉄武器からではなく化石武器・ベルダーブレイドからの強化となっているところがまたピンとこない。フルミナントソードも41式対飛竜大剣も、鉄武器からの強化ということで良いのじゃないかと思う。

ともあれ、このような背景が純骨武器・純鉄武器と属性武器の間にあるのだということにしてしまおう。さらに、強化ルートがピンとこない例としての話でもあったが、このように好きにルートは考え直してしまえば良いということである。それで、先にいったヴォルガノスの太刀・炎斬が骨刀【犬牙】経由で作られる、という話となる。MHXXでは鉄刀と骨刀は全く別系統なのだが、鉄刀にまず骨素材を融合する工夫がされ(骨刀)、それをベースに骨部分にモンスター素材がさらに融合されていく、という流れが収まりが良いと思うのだ。お気に入りの武器が出来上がる過程はこのような具合に勝手流で整理してしまうのが良い。

覚醒

さて、基本的に鉄武器というのは上のような仕組みで属性を得るものとしているが、ここに「覚醒」という概念が追加される。ゲーム上はハンター側のスキルとしてあり(MHX-MHXXにはない)、そのスキルの発動によって、無属性の武器が属性攻撃力を持つというものだ。

モンスター素材の無属性武器でも覚醒は起こるのだが、ここでは現状鉄武器にのみ起こることであり、ハンターのスキルではなく工房の方の技術で発現するものだとしたい。先に述べたような、鉱石はモンスターに由来するものである、というところと関係づけたいためだ。

鉱石はそうなった時点で幹細胞のようにもとの生体特性(属性)を忘れており、融合されるモンスター素材からまたその属性を得るとしたが、竜人族はその鉱石がモンスターだった頃の属性を鉱物に思い出させる技術を伝えてきた、としている。これがすなわちここでの「覚醒」である。

そもそも鉱石として残るようなモンスターは生前強大な古龍種であった可能性が高く、その覚醒を得られた鉱物は類稀なる属性値を発揮する、というところだ。そして、それこそが太古の塊などから得られる太古の武器なのだ、という話としたい。

エピタフプレート

エピタフプレートなど、その素材となっているのが未知の鉱物であるので再現できない、とされているが、実はそこまでの覚醒を得る技術が失伝しているのだ、という話である。もっとも、エンシェントドラゴン的な想像を絶する古龍由来の素材はもう得られない、という線なら未知の金属ということでも良いのだが。

ところで、ゲーム上の覚醒の仕様を待つまでもなく、すでに(MHの)現在の技術で覚醒に近いものが発揮されていたのではないかと思しき武器もある。特に、片手剣のオデッセイブレイドと双剣のギルドナイトセイバー(オーダーレイピア)にはその雰囲気がある。

すでに覚醒を経ていた武器か

共にクリスタルを素材に使うという点が共通している。あるいはクリスタルは他の鉱石素材よりも「思い出しやすい」物質である、というような話もありかもしれない。また双方共に古参には思い入れの強いプレイヤーが多かろう武器でもあり、ゲーム上の性能が微妙となっても、そのような背景を持たせることが使い続ける一助になるのじゃないかとも思う。

ちなみに余談だが、オデッセイブレイドもギルドナイトセイバーも名前の変化という問題を抱える武器でもある。オデッセイブレイドがマスターオデッセイとなるくらいならまだいいが、MHXXでは最後にアガメムノンという名になってしまう。ギルドナイトセイバーはオーダーレイピアと系統が二つになり、もうどれがどれやらという感じでもある。それで個人的にはこの形のこれはゲーム上どうあろうがオデッセイブレイドでありギルドナイトセイバーだ、ということにしている。そのくらいにしないとシリーズをまたいだ愛着を継続するのが難しいのだ。

これはまた異なる技術か

なお、いまひとつ気にしておきたいところがある。外見上まるっきり鉄武器でありながら、属性を持つ武器で、覚醒とはまた違うだろうという系統のものがある。上にあげたのは太刀の斬破刀で、見ての通り鉄刀とさして変わらないが、優秀な雷属性の太刀である。

覚醒と違うというのは、見た目に反映されないがフルフルやキリンの(最終的にはラージャンも)の素材を使っているということだ。そうなるとこれは金属の刃に融合させるモンスター素材の極小化に成功した武器とも、あるいは金属鍛錬にモンスター素材を混合させることに成功した武器などとも考えられる。氷系統で同じ立ち位置の凍刃や、北辰納豆流の南蛮刀にも同じことがいえるかもしれない。このあたりは今後の課題だろうか。

その他

さらにいまひとつ、上のどれとも違い、天然の自然物を武器として使用している例もある。代表的なのは氷結晶をそのまま武器とする片手剣のフロストエッジや双剣のクーラーダガー(MHXXではいきなりグレイス=マインド)、ハンマーのフローズンコアなどだ。

MHX-MHXXには、そのクーラーダガーの火属性版とでもいうべき、紅蓮石をそのまま武器としたような双剣が登場している。火刃ファイアストーンがそうだ。鉱石としての紅蓮石から得られる鉱物素材を鍛えて云々というより、その名からして紅蓮石そのままの武器なのだと思って良いだろう。もっとも、特に目を引く性能がどこにもないので、なぜ今になって登場したのか、という話はあるが。

氷結晶と紅蓮石の武器

実は、このあたりの話には、MH世界の根本的な成り立ち方の問題が絡んでくる可能性もあるのだが(一方に古龍と自然現象の同期の問題がある)、今はさて置こう。

さらに加えては、サボテンであるとか(カジキ)マグロであるとか、果てはキノコであるとか、ネタスレスレのほうへ行くとまた色々の武器があるが、これもひとまずは置いておこう。今回は近接の切断武器に限った話というところだが、基本的な背景作りの流れは上のようなところということで良いと思う。

ここしばらくの鍛冶ハンターの彼も、ルーキを卒業して以降はこういった課題に取り組んでいくという話である。また、そこを考えていくことが、その「ひとつの武器」への愛着を持つのに重要となる、という話でもある。「相棒」と呼べるだけの武器を持ちうるか否か、そこにMHの萃点のひとつがある、という考えは今でも変わっていない。

▶︎ 関連記事

概要
MHシリーズの基盤にはどのような構成があるべきか、ここでは「MONSTER HUNTER 0」のタイトルでそれを考えてみたい。

▼ 火の国の村

鍛冶とハンターと
極寒の雪山から、舞台は一転して灼熱の火山に移る。ここの話は根本の部分が他と違う。主人公は生粋のハンターではない。火の国の工房村に生まれ育った鍛冶のルーキーである。その彼が(専門には敵わぬまでも)狩猟も行っているのだ。

初期武器とギルドと
ルーキーの鍛冶がいきなりハンター個人の依頼など受けることはない。まずは先輩・親方の助手を務め、自身の製作としては広くルーキーハンターのために店売りされている初期武器を鍛えてギルドに納品することが目標となる(多分あの流通はギルドが管轄している)。火山の鍛冶としては、やはり鉄武器を鍛えることになるだろう。

太古の戦と結晶武器と
どうも火山というフィールドは、われわれの世界でいう活火山とは異なるらしい。曰く、あそこは太古に巨龍との大戦があった土地である。曰く、禁忌の龍の出現した土地である。それらのことにより、大地が火を吹いてかくなったのである……と囁かれる。そこに出土する風化したいにしえの武器どもが、大戦の残滓であるのだ、と。

「探窟」と模倣と
今回はこれまでと全く異なり、ゲームプレイヤーとしての「私」視点からの話としたい。十年前にもやったが、要は私が「おお、これは」と膝を叩いた漫画などゲーム外の要素をゲーム内で模倣してみるという話だ。地底火山を舞台にしたその一例をあげ、あとここ数年でMHの世界を考える上で影響を受けたいくつかの作品を紹介したい。

溶岩竜ヴォルガノス
鍛冶を本業としながら、ハンターとしても日々狩猟を行うという話なのだが、双方の関門にうってつけのモンスターがいる。火山の〝兄貴〟こと、溶岩竜ヴォルガノスだ。MH3・MH4系列には登場しなかったので、MHX以降で初めて対面したというプレイヤーも少なくないかもしれない。

▼ その他

森丘とランポスと
それぞれの土地には、そこに良く適応し、旺盛に繁殖するモンスターがいる。これをどう制するかがその土地に村落を営む人々、その村のハンター第一の課題であり、森丘に近いココット村ではランポスがその対象となる。

激闘リオレイア
ココット村のルーキーハンターは、三年ほど村と直轄の森丘の狩場で基礎を培う。そして、関門とされるモンスターを狩猟してのけたならば、ものになる者として街へ送り出される。イャンクックを狩れればまずまず、リオレイアを狩ってのけたならば期待の新人と見做されるだろう。

雪山と弾弓と
ポッケ村と雪山のルーキーハンターの話も、その骨子や構成の仕方はココット村のそれとそう変わるものではない。ここではその辺りはざっと見ることにして、雪山ならではという部分をクローズアップしていきたい。